かたの けいと片野 恵土
素材部 企画部門/2017年入社
自分で糸を紡いで作品を制作した経験から、糸づくりの楽しさと奥深さを知り、丸安毛糸に入社。糸の無限大の可能性や、組み合わせで変わる表情に驚き、企画と営業の業務に就く。
丸安毛糸のあるがまま
本投稿は note.com にて 2023年3月27日から4月22日まで、全8回に渡って連載されたものをまとめた記事になります。
はじめに
丸安毛糸では、イタリア・フィレンツェで年2回開催されている世界最大規模の糸の見本市「Pitti Filati(ピッティ・フィラーティ)」に2017年から出展しています。今回の出展はコロナ禍以降初となる3年ぶり。この出展のためイタリアに行ってきた素材部の片野さんと、汪(わん)さんに、展示会の感想や、現地での出来事を岡崎社長が自らインタビューしました。
「Pitti Filati(ピッティ・フィラーティ)」とは?
Pitti Filatiは、イタリアのフィレンツェで年2回開催される、糸や編み物の国際展示会。世界中のデザイナーやバイヤーが集まり、最新のトレンドを発信するとともに、製品や技術に関する情報交換の場として注目を集める。
かたの けいと片野 恵土
素材部 企画部門/2017年入社
自分で糸を紡いで作品を制作した経験から、糸づくりの楽しさと奥深さを知り、丸安毛糸に入社。糸の無限大の可能性や、組み合わせで変わる表情に驚き、企画と営業の業務に就く。
わん ぴんや汪 品雅
素材部 企画部門/2022年入社
台湾と日本で6年間、テキスタイルデザインを専攻。丸安毛糸のブログでサスティナブルな素材に関する記事を見て、入社。素材作りを通じて環境問題を考え、日々の仕事に取り組む。
岡崎:
さて、このたびはイタリア出張おつかれさまでした!
二人が帰ってきて約10日ほど経ちました。
(この対談は2023年2月に行いました)
この取材をリアリティなものにしたいから、この期間なるべく二人にはイタリアのことは聴かないようにしていましたが(笑)、今日の対談をめちゃくちゃ楽しみにしていました。
片野・汪:
(そろって)よろしくお願いします!
岡崎:
汪さんはイタリアへ行ったの初めてだっけ?
汪:
はい、初めてです。
岡崎:
片野さんは何回目になるの?
片野:
「MONTELUCE(モンテルーチェ)」としての出展は今回で7回目で、そのうち私は2回目の出展から携わっているので、今回で6回目のイタリアです。
「MONTELUCE(モンテルーチェ)」とは?
丸安毛糸が展開する糸のオリジナルブランド。ブランド名はイタリア語の「モンテ(山)」と「ルーチェ(光)」からなり、糸に触れることで、ひらめきや感動を感じて欲しいという想いが込められている。
岡崎:
前回と今回、出展して変わったことはあった?
片野:
前回までは、会場で一番小さいブース(5m×5m)でしたが、今回は思い切って2倍の広さのブースを準備しました。小さいブースだと、回を重ねるごとに狭く感じていたんです。
岡崎:
そうだった!MTGで最初この話が出たとき、「そんなに広くて大丈夫?!」って思わず片野さんに聞いたんだよね(笑)
片野:
今回は2倍でちょうど良かったんです!
ただ設営トラブルがあって、イタリアに到着して、まずは交渉からはじまりました(苦笑)
展示会前日に設営へ行くと、ブースの壁紙と床の色が発注と違ったんです。
大急ぎで会場の事務局と現地のペンキ屋さんと交渉して、すぐ塗り直してもらえることになりました。
ペンキの塗り直しと乾燥まで約2時間。すぐにでも設営したい気持ちを抑えながら汪さんとハンバーガーショップで待ちましたね。
岡崎:
過去の出展でも「指定していた床の色と全然違った…」ってことがあったよね!
片野:
はい。もはや、イタリアの展示会 “あるある” ですね(笑)
以前は、前日の午後から設営に行ってたんですが、今回ちょっと嫌な予感がして・・・早めに行ったら…予感的中でした。
ただ、こういうトラブルがあっても、最後はどうにかしてくれるのがイタリア人の気質なんだなと思います。最後までとても親身になって対応してくれました。
岡崎:
イタリアの人ってほんとそうだよね。わかるなぁ~
片野:
会場全体の設営に関しても、前日までほとんど空っぽで、床に誰かが食べたみかんの皮が落ちてたりで、「ほんとに明日から展示会できるの?」って心配になるくらいですが、ひと晩明けると、最高の状態で仕上がってますから。
汪:
私たちのブースの壁に、「アルファベットステッカー」を使って、今回の出展テーマ文を作ったんですよね。これはアルファベットが1文字ずつシールになってるんです。
片野:
そうなんです。
今回どういうテーマで出展しているか、イタリア語と英語でそれぞれ表現しました。
美術館の展示からヒントをもらったんです。実際の作業は、1文字ずつシールで貼り続けて2時間…大変な手作業になりました(笑)
岡崎:
それは大変な作業だったね!
で、お客様はその文章を読んでくれるものなの?
片野:
「何か書いてある」と立ち止まって読んでくれる方が多かったです。
汪:
その日は午前のトラブルがあって、設営と準備だけで夕方になってしまったので、展示会当日は朝早めに集まって、みんなで最終打ち合わせをしましたね。
片野:
今回は日本から4名の社員と、現地のエージェント(日本人)1名が出展メンバー。
新しい素材説明の最終打ち合わせを行なって、なんとか無事に、展示会初日を迎えることができました。
岡崎:
今回の「Pitti Filati(ピッティ・フィラーティ)」は、2024年のSS(春・夏もの)だったけど、お客様の反応はどうだったの?
片野:
ブースには常にお客様がいる状態で、3日間対応をしていたらあっという間に過ぎていったという感じでした。毎回、うちのブースに限っては春夏向けの方が反応は良いと感じています。
岡崎:
それは素晴らしいね。その中でも、印象に残った接客というとどんなことがあるの?
片野:
合成繊維と言われる化学的な繊維と、ナチュラルな麻や綿を混ぜて作る素材はヨーロッパにはない技術で、そこが「MONTELUCE(モンテルーチェ)」としては今回も最も高い評価をいただきました。
例えば、この「アロンジェ」という糸は、ポリエステルとラミー(麻の仲間)が素材です。この素材から、透けるぐらい細い糸を作る技術は「MONTELUCE(モンテルーチェ)」独自のもの。こういった点は、来場された方々に反応がとても良かったです。
汪:
お客様の中には「普段、合成繊維は使わない」というナチュラル志向のデザイナーもいらっしゃいましたが、そんな方たちにもアロンジェは評判が良かったですよ。
片野:
今日、汪さんが着ているニットに使われているものですよね!
綿100%なのにシャリッとした手触りで、お客様から「今まで見たことない」と反応がありました。
岡崎:
イタリアは、カシミアとか最上級の糸の本場だから、本来は、わざわざ日本からカシミアを買う必要がないんだよね。
だから、うちらが日本から出展して成果を出すには「MONTELUCE(モンテルーチェ)」として個性が出せる、こういう春夏の糸の方が良いのかもしれないよね。
片野:
はい。「わざわざ日本から買ってでも使いたい」って感じてもらえる素材をいつもラインナップすることが大切ですね。
「ほかにはない素材」というところが1番のポイント。
汪:
あと、“製品サンプル”があることで、お客様へプレゼンがしやすいですし、素材の魅力が伝わると感じました。
岡崎:
ほかのブースは製品サンプルを置いてないんだっけ?
片野:
そんなにないですね。
糸や編み地(糸を編んで作った布)はありますが、うちでは製品が完成したサンプルまで準備してお客様にプレゼンテーションしてます。
岡崎:
日本での展示会だと製品サンプルが欠かせないけど、海外での展示会はそれをやってる企業が少ない。これは、ほかのブースと差別化できるポイントだね。
片野:
そうですね。久しぶりのイタリア出展ということもあったので、いつもより多く製品を作って行きました。お客様の反応が良くて、製品化するまでの相談を受けることができました!
汪:
お客様がブースに来て真っ先に見るのは、ハンガーではなくて必ず製品。製品から素材を選ぶ方が多かったりしましたね。
片野:
ブースに来た海外のお客様は日本とリアクションが違っていて、良いものは「良い」。Noのものは「No」と、とてもはっきりしています。
見せて1秒ぐらいで反応がかえってきますし、良いものに対する評価には熱を込めてくれます。
その反応をみることが、とても楽しかったですね。
汪:
今回、展示会へ行って、うちのホームページの便利さを改めて感じました!
岡崎:
65周年の時だから、いまから3年前に、ホームページはリニューアルしたんだよね。どういうところが便利だと感じられたの?
汪:
たとえば、編み地とか製品サンプルとかが全てホームページに載せてあります。
今回、会場にはSS(スプリング・サマー)だったので、春夏の製品サンプルだけ持っていきましたけど、秋冬を探している方がけっこう多かったんです。
そういう時、ホームページの写真を見ていただきながら、プレゼンをすることができました。
岡崎:
なるほどね!
片野:
展示会が終了し、日本に帰国後も、ホームページの「ここで見てね」って紹介すると反応が良かったです。
日本から製品を海外に貸し出すことが難しいので、ホームページに編み地や製品サンプルがあると助かります。
実は、ヨーロッパの企業には、Webが充実している会社が多くなくて、うちの会社の情報量ほど内容が充実してないのです。いまのところ、世界に向けて展開していく際に、ここが大きなアドバンテージになっているのを感じています。
汪:
商品や各色の在庫、試験データとかも全てホームページで見れるのは便利ですね。
片野:
在庫状況が載っているのは助かりますよね。在庫の問い合わせが海外から来ても、時差があるので、日本から返信すると翌日になることも…
お客様が自分達でうちのホームページを見て確認してもらえれば、時差も距離も解消していけますからね。
岡崎:
じつは、コロナ禍の間にシステムを改修してました。毎週打ち合わせしてね。さらに今、ホームページは日本語と英語の説明だけど、中国語も準備しています。
会社の過去ブログで評判の良いものは、英訳を進めていて、海外からでもアクセスできるようにする予定です。
片野:
良いですね!世界展開に向けて、発信をもっと強化していきたいです!
岡崎:
ところで今回、コロナやウクライナ・ロシア戦争の影響はどのように感じた?
片野:
コロナの影響という点では、主催者側から「コロナ前に来場者数が戻った」という報告はありました。
来場者は全員ノーマスクですし、来場されたお客様と話してても「コロナが大変で…」という話題はまったく聞かなかったですね。会場の雰囲気も、コロナ禍の影響なんてまるで感じなくて、3年前の続きという感じでした。
自分達が思っている以上に、ヨーロッパはもっと前向きに進んでいるだって実感しました。
岡崎:
“前向き”ってどういうこと?
片野:
日本にいると「コロナ」「自粛」といったキーワードをまだ耳にしますが、今回の展示会ではコロナっていう単語がほとんど出ないくらい、通常に戻ってる感じがありました。
汪:
中国と香港からのお客様は旧正月の影響で少ない印象でしたが、ヨーロッパ、アメリカ、インド、アフリカからのお客様が大勢いましたね。
岡崎:
日本からイタリアのフライト時間はどんななの?
汪:
今回、イタリアへ行く飛行機はロシア側をフライトできないので東回り(日本→アメリカ方面)でしたね。
片野:
そうですね。通常は西回り(日本→ヨーロッパ方面)なので、今回のルートは初めてでした。世界情勢をこういう部分にも感じますね。
汪:
羽田空港から一旦フランスのパリへ。イタリアのフィレンツェまで合計15時間の移動でした。
岡崎:
うひゃー!大変だったね。
通常なら12時間で行けるのに、いまはそんなに時間がかかるんだね。移動は相当疲れるんじゃない?
片野:
Netflixを観たり、寝たりするので大丈夫ですよ!(ケロッ)
汪:
窓の外の景色を見たり、機内の映画を観たり、寝たりしてました。(ケロッ)少し長いなと感じましたが、二人とも大丈夫でした!
岡崎:
若いなぁ…。頼もしいわ(笑)
あと、ロシアから来たお客様に日本から荷物を送れないって聞いたけど、その点などはどうなっているの?
片野:
そうなんです。展示会から帰国して、日本からお客様へ資料を発送していますが、日本からロシアは荷物を送ることができないんです。(2023年2月時点)
でも、ヨーロッパを経由すると、ロシアにも荷物を届けられることがわかり、イタリアのエージェントさんに手伝ってもらいながらロシアまで荷物を送ったり。試行錯誤しています。
岡崎:
展示会の出展ためにイタリアに行ってもらったけど、展示会以外のイタリアの思い出などを少し紹介してよ。
汪:
今回、初めてイタリア出張に行って、もっと話ができたらいいなと思い、帰国後、すぐにイタリア語の勉強をはじめて、それに今ハマっています。
岡崎:
そうなんだ!
汪:
初日の設営トラブルがあった時、現地の方に英語が通じなかったんです。もっとイタリア語が話せたらコミュニケーションがスムーズになったり、交渉もできるなと思って。
岡崎:
すごいな!
私もイタリア語を勉強したけど、女性名詞、男性名詞とかあっておもしろいよね。
汪:
はい、学ぶだけでも楽しいです。台湾人の先生から、オンラインでイタリア語を習ってます。
片野:
現地の言語で話せる人がいると、コミュニケーションが深くなりますよね。イタリアだと英語だけだと限界がくると感じていたので…
汪さんの今後に期待!!(笑)
岡崎:
イタリア語でレストランのメニューを読めたら良いよね!
私がイタリアの展示会へ行ってた時は、イタリア語オンリーのところがまだ多かった。メニューをちゃんと読めれば、何を食べられるのかがイメージつくもんね。そのためにイタリア語を勉強したな。
片野:
汪さんは、イタリアで本場のジェラートに感動してました。毎日、みんなでジェラート食べてたよね!
岡崎:
ジェラート、おいしいよなぁ~!
ジェラートは最後に聴くとして、イタリアの食事で何が印象に残った?
汪:
牛肉のタルタルですね。
片野:
生肉を包丁で叩いて、スパイスを混ぜて、ハンバーグの焼く前のかたまりみたいになってるんです。それをバゲットにのせて食べると、とってもおいしくて!
汪:
うん、感動しました♪
岡崎:
さらにさらに?
片野:
あと、ステーキが美味しかったです♪
イタリアは色々と美味し過ぎて、仕事もたくさんしたのですが、顔が丸くなりました(笑)
岡崎:
展示会中はゆっくりランチ食べられなかったでしょ?
片野:
はい。初日はサンドイッチを買ってきて、バックヤードで順番に食べることができましたが、2日目、3日目はバタバタで、ランチはまったく食べることができず…
汪:
忙しくて、気づいたら終了の時間になってましたね。
岡崎:
イタリア人の夕食の時間帯は夜8時くらいだよね?展示会が終わって、ホテル帰って、夕食までの間に買い物やお土産探しへ行ったんじゃない?
片野:
そうですね!じつは夕食の前にジェラート食べてました(笑)
岡崎:
何のジェラートが1番おいしかった?
汪:
ピスタチオです。
片野:
いろんなお店のピスタチオジェラートを食べ比べましたよね!
汪:
一番おいしかったのは、日本の銀座にも出店しているジェラート専門店「Venchi(ヴェンキ)」です。
Venchi(ヴェンキ)
イタリア・トリノで140年以上愛される老舗チョコレート・ジェラート専門店「Venchi(ヴェンキ)」。世界70か国に100店舗以上あり、日本では銀座をはじめ、13店舗展開している。(2023年3月現在)
片野:
地元のジェラート屋さんも行ったりしましたが、たしかにそこが1番おいしかったですね!
岡崎:
片野さんは入社して何年目になるんだっけ?
「Monteluce(モンテルーチェ)」立ち上げの時にちょうど入社してたよね。
片野:
6年目です。採用面接を受けた時に岡崎社長が「いつか海外に出展したいんだよね」というお話をされていて、私が入社したら、「来月イタリアで出展が決まった」と仰ってました。
「Pitti Filati(ピッティ・フィラーティ)」に初出展された時、私は現地には行かなかったのですが、来場されたお客様とのやり取りを、日本から携わらせていただきました。
岡崎:
面接の時は「出展したいんだよ」って話だったのに急展開だったよな~。片野さんは、入社前から海外で仕事をしたいと考えてたんだよね。
片野:
そうですね。私は学生のときに英語をずっと勉強していました。あと、ニットも学んでいたので、英語とニットをかけ合わせて、何かできたら良いなと思って。
岡崎:
片野さんは、下の名前が「恵土(けいと)」。「毛糸」と読めるし、まさにこの仕事は天職みたいだよね!
片野:
ありがとうございます。私はイタリア出展の2回目から現地に行き、今回で6回続けてイタリアへ行かせていただいてます。
岡崎:
頼もしいよね。これからも海外展開よろしく頼むね。
片野:
はい!
岡崎:
汪さんは今年入社して1年目であることを忘れさせるくらいがんばってくれていますが、汪さんの入社のきっかけを改めて話してもらえるかな?
汪:
私は台湾出身で、日本の大学と大学院でテキスタイルの勉強をしました。この会社を知ったのは、丸安毛糸のホームページからです。
就活をしている時、岡崎社長のブログや社員紹介を読みました。糸を売るだけじゃなくて、糸を企画したり製品を創ったり。
あと本社1階には「アンティークcafe ウール倶楽部」もあって。前向きな姿勢に、将来性があるなと思ったんです。
岡崎:
2人の活躍は頼もしいよね!
ところで片野さんは来週、ニューヨークに出張なんだよね。
片野:
そうなんです。今回のイタリアの展示会は春夏コレクションだったので、ニューヨークからわざわざ今回の展示会に来るお客様が少なくて。展示会に来なかったお客様をフォローしに、ニューヨークへ行った方がいいんじゃないかって。イタリアの展示会中に、マネージャーに相談して、ニューヨーク出張を決めました。
岡崎:
イタリアから日本に帰って、3週間後に今後はニューヨークへ行くって、かっこいいな!!
片野:
ニューヨークのアポイントが7社あるので観光してる余裕は無さそうですが…(苦笑)4泊6日の強行スケジュールで行ってきます。会社としても、ニューヨークでのプレゼンは初めての試みなので、新しいきっかけなど出来たらと思います。
岡崎:
よろしく頼むね。
ニューヨークの出張レポートもまた話を聴かせてください。汪さんも今度、上海に出張なんだよね。
汪:
はい。イタリアの展示会に中国のお客様が来てくれて、いろいろお話しできました。
岡崎:
ずっと話してるでしょ?
汪:
そうなんですよね!ブースで3時間くらい話しましたね。
片野:
「Pitti Filati(ピッティ・フィラーティ)」へ行くと、とても出会いがたくさんあるっていうのは、今回も改めて感じました。
岡崎:
2人の話を聞いていて、「Pitti Filati(ピッティ・フィラーティ)」に初めて出展した時のことを振り返りたくなってきたんだけど、私も語って良いかな?
この記事をはじめて読む皆さんにもお伝えしたいな。
片野・汪:
よろしくお願いします!
岡崎:
はじめて「Pitti Filati(ピッティ・フィラーティ)」の視察に行ったのは、1995年1月末、私が32歳の時でした。
イタリアは世界で一番素晴らしい糸を創る国で、この展示会にはヨーロッパ、アメリカ、アジア、世界中からバイヤー、アパレルメーカー、ニットデザイナーが集まっているんです。ホント凄い衝撃を受けました。もうね…。震えるほどの衝撃!!
それから約22年、毎回視察へ通い続けて、丸安毛糸が60周年を迎えた時にふと…「自分達も出展してみたいな…」と現実的に考えるようになって。
糸で世界に出てみたい、どんな評価を受けるんだろうか、まだまだなのかな、太刀打ち出来るのかな…
いろんな思いが交錯しながら申し込んだら、突然、「Pitti Filati(ピッティ・フィラーティ)」出展の合格通知が届いて!
片野:
出展が決まって、私たちのチームマネージャー松井さんを中心に準備されたんですよね!
岡崎:
そうそう!
初出展が決まった時、「丸安毛糸」という社名を出さずに、私たちの糸をブランド化しようと考えて。
だけどね、出展が決まって展示会の当日まで約半年。
常識的に考えれば、半年という期間はあまりにも短かったし、実際に「半年じゃ準備できない」って声もあったんだけど、こういうチャンスはつかまないと逃げるじゃん。だから「絶対出る!」って言って。半ば強引に実行に移したんだよね。
その結果、ブランディングを1から速攻で作って、「Monteluce(モンテルーチェ)」を生み出すことができたのです。
片野:
ブランド名から全部半年で準備されたんですよね!
岡崎:
そうそう。なんとか当日を迎えたものの、正直、初日は不安だった(笑)
展示会初日の午後まで我がブースにお客様が誰も来なくて…
めちゃくちゃ焦ったし、このまま最後まで一人も来なかったら…なんて良くないことばっか考えだしちゃって(笑)
だから、気持ちを落ち着けるために、冬の会場をふらふらと散歩したの。そうしたら少し落ち着いてきて。で、ブースに戻ってみたら…お客様がいっぱい来ててさ。
片野・汪:
おぉーーー!!
岡崎:
海外ではポリエステルの素材を使った糸が珍しいんだよ。
「ブースは『Monteluce(モンテルーチェ)』ってイタリア名だけど、日本人がやってる面白いブースがあるぞ」って口コミで広がって。それから、展示会期間中、ずっとお客様が来続けてくれたの。
片野:
最初の出展から、いろんな方に「Monteluce(モンテルーチェ)」見ていただいて。すごい波でスタートできたんですよね。
岡崎:
この経験でわかったことは、海外で得たチャンスはすぐ実行すること。これに尽きると思っているんだよね。
「いつか準備したら」じゃ遅い。とにかく、やりながらチャンスをつかんでいかないと。
日本のお客様は割と待ってくれるけど、海外のお客様はまったく待ってくれない。世界は広いから、すぐ別のところにチャンスは行ってしまうんだよ。
チャンスは、その時その瞬間にグッとつかまないとね。
岡崎:
海外の展示会に出展してみて強く感じることは、出す前から、成約はもちろんのこと、受注した後の供給体制まで見据えてないといけないってことだよね。
片野・汪:
そうですね。
岡崎:
象徴的な例えで、パリコレで使われる約70%の生地は日本製なのに、実際に販売される商品には日本製の生地はそこまで使われていないらしい。
なぜかというと、サンプルまではいいんだけど実際の本オーダーになると、「すみません、納品に6ヶ月かかります」となってしまう。
海外は日本よりスピードが早いので、すぐに提供できないとビジネスチャンスを失ってしまう場合が多々ある。
最近は、皆んな何とか頑張って対応してるけど、コレクションではあんなに日本の生地が使われてるのに、輸出がそこまで増えてないのは、それが要因だと言われているんだ。
片野:
海外に出展して改めて感じるのは、1回成約すると、注文の量がやっぱり日本よりもケタ違いに大きいことです。
岡崎:
世界展開していく上で、供給がちゃんとできないとお客様に迷惑かかっちゃうからね。
片野:
そうですね。いま現在も、私たちのアイデアを形にしてくれるパートナーがいっぱいいるわけですから、供給もしっかりやって、海外のお客様に喜んでもらいたい。
岡崎:
日本の製造の人たちに感謝していきながら、一緒にモノを作っていきたいね。
汪さんはイタリア語の勉強をすると話してくれましたが、次の展示会までに他にやってみたいことはある?
汪:
そうですね、新しいビジュアルを作りたいと考えてます。今回の展示会、
私たちは「ファッション&アーキテクチャ」というテーマで準備して手応えを感じる反応がありました。
私たちのチームマネージャーと話し合って、次回も同じテーマで挑戦することになりました。今回以上にお客様に喜んでもらうための、アイデアを今から出し合っています。
岡崎:
片野さんと汪さんが所属する「素材部」について、この記事をはじめて読む方に向けて紹介してくれる?
片野:
はい、チームマネジャーがトップにいて、その下にメンバー5名がいます。
1つのコレクションをこのチームで作っていて、編み地担当、製品担当、ビジュアル担当に分かれて、シーズンごとに制作するカタログのデザインも分担しながら進めています。
現在、部内で新しく「ビジュアルチーム」を作りました。
素材に力を入れることはもちろんですが、その素材を見せ方やブランディングをもう一歩進化させていきたいと考えています。
岡崎:
「MONTELUCE(モンテルーチェ)」というブランドをもっと高めていきたいね。
「この糸いいね!」って言われるだけに留まらず、カタログにしても、展示会にしても、どこから見てもMONTELUCE(モンテルーチェ)。そして、その世界観が好きだから使いたいってお客様を増やしていきたい。
岡崎:
次回の「Pitti Filati(ピッティ・フィラーティ)」はいつ開催だっけ?
片野:
次は6月開催、秋冬のコレクションです。秋冬に向けたリサーチを始めました。
汪:
イタリアの展示会、継続して挑戦してみたいです。「Pitti Filati(ピッティ・フィラーティ)」以外の展示会にも行ってみたいですね。
ずっと日本にいると、海外の視点とか新しい情報が見えなくなります。今回、イタリアに行けたことはとても良い経験でした。
片野:
コロナ禍以来、3年ぶりに出展をして、お客様と直接会う大切さを実感しています。
その場の空気感だったり、メールや電話ではいただけないようなフィードバックをたくさんもらいました。
出展を継続させること。オンラインとオフラインをうまく活用しながら、私たちのブランドを世界に発信できるようにがんばっていきたいです。
(おわりです。最後までお読みいただきありがとうございました)
今回の記事はいかがでしたか。あるがままの私たちを知ってもらえれば幸いです。
丸安毛糸は『世界中のニットを愛する人たちが集う会社』です。私たちは、ニットを愛し、新たな挑戦に立ち向かい、未来を切り拓いていく仲間を募集しています。
会社説明会開催情報や募集要項、エントリー方法など、採用情報ページでご確認ください。