Collection

2025-26 Autumn/Winter

PROLOGUE

鋳造

ビッグなトレンドに対して人々がこぞって模倣する時代は影を潜め、如何にして各々の個性・価値観を体現するファッションを見つけるか?という時代に新しくシフトしているように思う。この流れを紐解いていくと、インクルーシビティの実現が根源にあるのではないかという考えに行き着いた。

人類の歴史を覗いてみれば、戦争により命を奪い合う社会が長年続いたが、革命と過ちを繰り返すことで、人々の命が守られる仕組みが作り上げられた。命が保証されるようになれば、公平に人々が過ごせるよう、差別や偏見を無くし、人権を守る運動が繰り返された。まだ尾を引く根強い問題ではあるが、体系的には、人権侵害が起き無いよう法律やルールが設定され、倫理観も形成されてきている。

命と人権の保障がされることでやっと見えてきた、人類が次に目指すべき社会とは?他者に危害を加えない限り、どんな文化、価値観、外見も否定されず、お互いを高め合うことで共存する、インクルーシブな社会ではないだろうか?

ここまでのベースとなる社会の上に生きる現代人にとっては、次なる社会である、インクルーシブな社会実現に向けて尽力し、発展させていくことが、果たすべき大きな役割だと強く思う。そこで、我々としては、いくつかのシーズンのコレクションを通して、インクルーシビティへアプローチしていこうと乗り出した。

だが、ここで一つ大きな壁にぶち当たる。ファッションにおいては、インクルーシビティと対比するエクスクルーシブなモノやサービスにラグジュアリー感や希少性を見出し、そこが価値として売り出されてきた。そうすると、従来のファッションにおける価値と、インクルーシビティの考えが相容れない要素となり得てしまう。そもそもファッションでインクルーシビティを表現出来るのか?ということである。この相反する関係が、ファッションの第一線では、取り上げられづらかった理由ではないかと思う。

では、この未知なる挑戦である、ファッションとインクルーシビティを両立した表現を行うには?第一弾のアプローチとしては、どんな形へも自在に変化出来る”鋳造”からインスピレーションを受けることで、どんなモノや人も受け入れられる世を体現しつつ、新たなるクリエーションとクラフトマンシップを生み出そうとした。既に形成されている物体が溶け出し、新たに形作られる鋳造のように、扱う商材は同じでも、従来と異なる視点を持ってモノ作りを行うことで、新たなる価値を生み出そうとしたコレクション、それこそがMONTELUCE 2025-2026 AWである。

KNITTING INSPIRATION