12 服と建築
服と建築は似た性質がある
日本有数の建築家の哲学に興味を持ち
それを知る毎にこのように感じ
また平行して,私達のモノ作りに応用可能な点を多く発想するキッカケともなった
今回はその多くの建築家の中でも取り分け
”隈研吾氏”の作品や哲学に一番影響を受けたこともここに記しておく
“呼吸する建築“
日本の建築は,西洋などと異なり
石の切り出しなどではなく,建材の主として
木や土 など呼吸する素材を主に取り入れ
またその組み立て構造としても 巧みに“間“をデザインし
人が感じる 物質的な軽さを演出し
その空間は密閉されることなく 空気が通り、まさに呼吸する建物となる
この建築様式は まさに日本が誇るデザイン哲学ではないだろうか?
そう考え今回シーズンのテーマとすることにした
デザインには構造を支える線と視覚的に大きく働きかけるデザイン線の2要素が存在する
構造線は建築でいう建物の強度を保つ柱や体力壁を指し
デザイン線は 視るということを通じて、人にどのような 感覚を与えたいか
物理的には 必ずしも必要ではない線をどのように扱うかということ
近年,建築のことは深くをあまり知らないので、偉そうなことは決して言えないが
多くが合理性を大きく意識して作られた物ではないのか
そして 服づくりも同様 あるいはそれ以上にひどいのではないか
そのように感じる
ニットというモノ作りは
糸を使用して,その組織の持ち方も組み合わせも もはや無限といって良いほどの選択肢がある
例えば 太い糸
太い糸を用いた編み地は地厚に仕上がり 見た目にも強さが出る
その強さの印象を持たせたデザインが破綻しない範囲で
例えば“間“を加えることで また強さとは要素が加わる
編み構造に穴を開けたり 、細い糸を 太い糸の代わりに一部組み込んだり
そうすることで
そのデザインは視覚的にもそして実際の重量にも軽さが生まれる
この作用は決して単なる引き算ではなく、違う要素を持たせることで
太い糸のみでは持たせることの出来ない質感を新たに加えることが出来るということだ
デザインの定義は見た目だけを指すことでは勿論ない
生産性や耐久性 使い勝手や重量 質感
そして作品を通して受け手にどのような印象を与えたいかなど
作り手がどれだけ多角的に思考して作り上げることが出来るかで
物の価値は薄くも厚くもなる
それを数ある日本の建築哲学から学びを得
私達のニットのモノ作りに置き換えたいと挑戦を始めたのが本コレクション
このテーマはもっと追及する価値を感じるテーマと考えているので
次のシーズンテーマとしても継続をしていく